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Memorable Moment単独公演「GIFT」特集 KAORIalive

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ハイスキルな身体能力と研ぎ澄まされた群舞、卓越したメッセージある世界観でその名の通り「記憶に残る瞬間」を生み出しているダンスカンパニーMemorable Momentが今週末、東京で単独公演「GIFT」を行う。リーダーKAORIaliveに行ったインタビューでは、メンバーの信頼し合う組織力の高さと、彼女の止まらない創造力の源を聞くことができた。1日のみの貴重な公演なので、是非その目で記憶に残る瞬間を焼きつけてほしい。

 

  • KAORIalivekaorialive

Memorable Momentリーダー。16歳よりHIPHOPをはじめ、後にジャズダンス、バレエ、モダンダンス、コンテンポラリーを習得。「Dance Company DINYOS」のプロメンバーとして、フランス招待公演などに出演。退団後はソロとして、LAでのアーティスト活動を開始。現在は日本と海外で活躍し、振付作品はDANCE@HERO 4th SEASON(テレビ東京系)、Legend Tokyo Chapter.4など国内のコンテストで優勝する他、VIBE DANCE COMPETITIONをはじめ、海外のコンテストでも高い評価を得ている。また、ダンススタジオのオーナー・指導者としてシーンの発展や後進の育成にも力を注ぐ。

 

 

 

  • Memorable MomentMMred

日本トップクラスのコレオグラファーKAORaliveを中心として活動する『表現系ジャズダンス』チーム。 特にクオリティの高いユニゾンとメッセージ性の高い独自の世界観あふれる振付作品の評価が高く、日本国内をはじめ、世界大会での受賞歴も多い。確かな実力に裏付けられた表現で、劇場空間のみならず、他ジャンルとのコラボレーションやサイトスペシフィックな場所でも場の力に負けない作品を創り出す。伸びやかな身体から繰り広げられる作品は、観客の想像力を超える圧倒的な世界を創り出し、研ぎ澄まされた感性は世界でも称賛を浴びる。演出力、表現力のどれをとってもハイレベル・ハイクオリティーとの評価が高くストリートダンス界、ジャズダンス界、コンテンポラリー界でいま最も注目されるチームである。

 

 

絞ったらカラカラになるから、また新しいものを吸収するという繰り返し。

 

TDM KAORIaliveさんはMemorable Moment(以下MM)のリーダーとして、いろいろな演出、振付などを経験されていると思うのですが、本格的に自分の作品を創りはじめたのはいつですか?

 

KAORIalive  25歳です。自分のスタジオを持って発表会をやった時でした。20歳から教えているのでレッスンで振りを作ることはあったんですけど、25歳から独立したので、作品を創り始めたのはその歳からですね。

 

もともと振付に関しては、「この振付を何でこのように作ったんだろう?」と考えるのがすごく好きでした。一つの手を出す動きでも、「何でこのタイミングでこの手を出したのかな」「1回目と2回目の違いってなんだろう」とか、そういうのを膨らまして考えるのが好きで。今でもワークショップなどで人の振りを踊る時はすごく感じますね。振付を受けるのも好きで、スタジオを立ち上げたきっかけも「自分がもっとレッスンを受けたい!」という思いからなんです。なので、設立当初はレッスンを受けまくっていましたよ。「あのオーナーさん、めっちゃレッスン受けてる!」と思われてたかもしれません (笑)。

 

でも、いろんな方の振付を吸収し、それが自分の身体を通ることでまた新しい何かが生まれる。そういうのってダンスだけじゃなくて日常生活でもそうですよね。スポンジみたいに吸収して、それを絞り出して、絞ったらカラカラになるから、また新しいものを吸収するという繰り返しだと思います。

 

少しでも上がったら降りることができなくなるし、そこの孤独はずっとあります。

 

 

TDM 終わった後に感じる事や変化、次へのモチベーションなど、どの様につなげていっていますか?

 

KAORIalive
   p04 作品は毎回創るんですけど、ゴールがないのでいつも不安ですね。2013年にアメリカのVIBE DANCE COMPETITIONや、WORLD OF DANCEに出て賞をいただいたんですが、海外で評価をいただけたことでやっと「作品が良かったんだ」と思うことができました。今年3月にはダンス・ダンス・アジアでベトナムにも行きましたが、お客さんの反応を見るまではずっと不安でしたね。でもクリエーターの人は皆、お客さんの反応をみるまではどこかで不安があったりするんじゃないかな。評価してもらえて初めて「良かった」と思うけど、その後に宙ぶらりんみたいな感じになって、そこから「どうしたらいいんだろう」という気持ちには毎回なります。少しでも上がったら降りることができなくなるし、そこの孤独はずっとあります。

 

■振付師として求められる役目。

 

KAORIalive 最近、宝塚歌劇団で振付をさせていただいたのですが、宝塚は振付を短期間で仕上げないといけない。そこで初めて気が付いたんですけど、私は振りとか構成を創った後の手直しに時間をかけたいタイプ。ベースを作って終わりではなくて、そこから変化していくことが、作品の完成に必要なんじゃないかなと思うんです。宝塚歌劇団では短い時間の中でたくさんの振付を創って渡していきましたが、その中で私は「振りを渡して終わり」というのではなくて、渡した後にダンサーの身体を通してでてきた表現がもっと良くなる方法をずっと考えていました。舞台で魅せる表現やシーンは、振付者とダンサーで一緒に創り上げていくものだと思うんですね。振りを渡したあとにダンサーが舞台でその世界を表現するまでが振付師の責任だと思うので、宝塚歌劇団のお仕事をさせていただいたことで「ダンサーと一緒に納得のいくまで振付を創り上げていくことの大切さ」に改めて気が付くことができました。

 

TDM 普段MMのメンバーやストリートダンサーと触れることが多いと思いますが、宝塚の演者さんを見て何か感じましたか?

 

 

KAORIalive バレエの基礎をしっかり習得されていて、振付を覚えるのがとても早く、そして次のリハーサルまでにある程度の形に仕上げてきてくださる。それがプロだなと思いました。日々、たくさんの本番を続けていく意識の高さを感じましたね。伝統ある宝塚歌劇団の、しかもトップの演出家さんが今回は新作の振付師として私を呼んでくださった。その理由がなにかあると思ったので、振付には今までの宝塚にあるものを生かしながら、ダンサーがやり易いものだけでなく、みんなの良いところを引出せるような工夫をしました。ダンサーの新しい一面を引き出すことで、私が振付師として入った役目を果たすことができるかなと思って。

 

 

TDM 実際、創ってみてどんな評価でしたか?

 

 

KAORIalive ストーリーやお芝居とのシンクロ感がある振付で良かったという評価をいただき、ホッとしました。宝塚歌劇団は今年で101年目。100年以上続いていて、もう伝統芸能ですよね!女性が男性を演じて、最後には大きな羽を背負ったスターたちが大階段で華やかに踊る。壮大な夢の世界が繰り広げられる中で、私の振付もその世界の一部として素晴らしいシーンを創らせていただき、良い評価をいただけて本当にうれしかったです。

 

■巧みな組織作り。

 

TDM 今回の6月6日の「GIFT」は、今どんな進行状況ですか?

 

 

KAORIalive
メンバーの10人をそれぞれ演出、振付、衣装班と分けて、期限を決めて、分担しながらリハーサルを進めています。私が割り振りをし、イメージをそれぞれに伝えて、各グループで作ったものを相談しながら進めてという形です。だから私は確認をするだけということもありますよ(笑)。準備もどんどん進めて、効率が良い形になっていますね。

 

TDM すごい!10人がダンサー+αの役割を持っているということですね。

 

 

KAORIalive そうですね。各班にもリーダーがいて、その子がそれぞれの班を仕切る。最終的に皆に共有するんですが、それまでは各班でそれぞれがやる、という形なのでちょっとした会社ですね(笑)。それぞれ向き不向きもあるから、うまく割り振りをして、効率よくやってダンスに集中できる環境をつくっています。限られたリハ時間なので、そこに集中する為に皆で分業しています。

 

TDM
組織作りが上手いんですね。

 

KAORIalive
p01そうなのかな(笑)。ディスカッションもすごくしますね。ケンカではなく、皆で話をします。そういう意味で裏表がないというか、溜め込まないし、みんな仲がいいですね。週に1回は必ず全員集まっているので、そこでMMとしての強さは磨かれていると思います。ちゃんと継続的にやっているのはカンパニーとしての強みになっていると思います。

 

TDM
信頼関係ができていて、そういう仕事が出来てるって凄いですね。それがあるから成り立ってるんですね。

 

KAORIalive そういうのも少なからず踊りに出ますしね。本当にみんな仲が良いし、感謝してるし、みんなを尊敬しています。MMのこれからの課題はそういういいチームを、ダンサーだけじゃなくクリエイティブな方でも作っていって、MMにしかできない舞台作品をやることですね。

 

■年齢関係なく、生きている人すべての人に見てもらいたい作品。

 

TDM 今回のテーマは?

 

 

KAORIalive
「生きる」という普遍のテーマを題材にしています。タイトルの「GIFT」というのは、頂いた命を指しているんですけど、皆が生かされていて、それをつなげていくという命や人とのつながりがテーマの作品です。

 

 

TDM テーマはどの様に決められるのですか?

 

 

KAORIalive
p03自分の中で心に刺さったことがあるとそれがすぐに作品になるわけではなくて、そのダメージがずっと心にある。「何でだろう?」と思うことが日常生活であると自分の中でそのことが蓄積されていて、消えてないんですね。それを作品として創りたくなる時期が来る。自分の中で「何でだろう?」と思ったことを出発点として作品として創ることが多いですね。

TDM
確かにMMの作品は明るいというよりは暗いというか、シリアスなものが多いですよね。

 

KAORIalive そうですね、それはよく言われます。でも、そこからプラスに生きていこうというメッセージが含まれています。生きている中で、いろんな困難がありますよね。それを題材にしていることが多いからかもしれません。「GIFT」には誰もが触れる「死」であったり、幼少期の「イジメ」であったり、そういったものも入っています。もちろん、明るい部分もありますよ(笑)。私が幼少期の役をやるんですけど、そことかすごくコミカルですし。私が子役をやっている時点で・・・コミカルですね(笑)。あと普段は私すごく楽観的なので、作品を観て、初めて私に会うとイメージが違うからとてもびっくりされます(笑)。

 

■あの時の辛さがあったから、今は何も辛くないです(苦笑)。

 

TDM
KAORIaliveさんの作品に向き合うスタンスは何かに影響を受けましたか?

 

KAORIalive 若い時にクラシックバレエとモダンバレエとジャズをベースにしたアートカンパニーに所属していたんですが、そこにコレオグラファーと演出を兼ねた先生がいて、その先生が今の私を作っているといっても過言ではないくらい、そこでの生活には影響を受けました。朝の8時にスタジオに行って、自分でトレーニングを10時までやる。そこから、掃除をしてレッスンをして、昼休憩は自主トレをして、また夜のレッスンをしたり、リハーサルがあったり。更に、そこから深夜ミーティング、リハーサルをして、深夜3時くらいに帰宅して3時間くらい寝る…という生活をずっとしていました。カンパニーに入ったのは18歳、高校を卒業してすぐ研究生のような形で入り、20歳まではバイトしながら、その生活を23歳までやっていたので、5年間。そこで”踊ること”というのを教えてもらったし、取り組む姿勢も含め、本当にたくさん教えてもらいました。あの時の生活に比べたら今は本当に楽ですね。あの時の辛さがあったから、今は何も辛くないです(苦笑)。

 

作品に対しての解釈の仕方や、自分がどうアプローチするか、それに振付家の意図なども考えるという場だったので、そこでの生活は今の私にすごく影響していると思います。

 

 

TDM 18歳からの5年間と言うと、いわゆる感性や考え方が一番影響を受ける時期だと思うのですが。

 

KAORIalive そうですね。多感な時期にそのカンパニーにいて大きな経験を積ませてもらったことはどんなことにも代えがたい時間でした。カンパニーと先生には本当に感謝しているし、その頃は仲の良い高校の友達とも全然連絡を取らなくなって、「人が変わったよね」と言われるくらいだったけど、それぐらい本当にがむしゃらで、とても大切な5年間でした。

 

■ダンスをやってない、知らない人たちにダンスの素敵さをどれだけ伝えられるか。

 

TDM
関西のジャズのシーンはどんな感じですか。

 

KAORIalive
頑張っているけど、ダンサーに向けてやっているという形になってしまっているところが少なからずあると思います。私はダンサーに向けて、と同じぐらいダンスをやってない人にもどれだけ広げられるか、ダンスを知らない人たちにダンスの素敵さをどれだけ伝えられるかが重要だと思うので、自分も含めて関西のダンスシーンはもっともっと大きな視野を持っていかないといけないなと思いますね。自分もダンスに魅了されたし、それで生き方もプラスに変わったから、そういうこともどんどん伝えていきたいと思っています。ダンスを広げるということの一つに私が東京で活動する、というのもあるかなと思います。例えば、以前演出と出演をさせていただいた東京ランウェイでのファッションとダンスのコラボレーションにしても、東京という大きなシーンだといろんな可能性をもった活動をすることができて、結果ダンスを広げることにつながると思うので、関西だけでなく東京での活動も広げて、新しいことをどんどんやっていきたいですね。

 

TDM KAORIaliveさんの活動の中で、今後のMMについてどのように考えていますか?

 

KAORIalive p05MMは、日本だけでなく海外にも行き、いろんな国の人と交流をしたいと考えています。国境や言葉を超えてダンスを通して文化交流できるように、自分たちが教えるだけでなく、自分たちも違う文化のことを教えて欲しいし、本当の意味で交流したいから、そういうことはどんどんやっていきたいなと思っています。ダンス・ダンス・アジアで行ったベトナムも、そういう意味で本当に良かったです。ワークショップで受講してくれた現地の子に「じゃ踊ってみて」と言って見せてもらった時は、本当に私たちもテンションが上がったし、一つの振付にそれぞれの個性が加わってでてくる踊りがとても良くて、ハイタッチをしまくってました(笑)。交流できた実感がして、「やっぱりダンスはパッションだ!」と思いました。レッスンだと、教える立場と習う立場はすごくセパレートされているけど、ワークショップはもっとお互いが近くになりますからね。すごく楽しかったし、他の国でももっとやりたいなと思いました。

 

■夢は東京オリンピックの開会式!

 

TDM 近い将来で自分の中でやりたいことってなんですか?

 

KAORIalive 東京オリンピックの開会式に関わることです!(笑)。オリンピックは世界中がひとつになる大きなイベントというだけでなく、世界中の人たちが同じ精神のもと、それぞれの文化を尊重しあう大きな意味をもつものなので、ダンスを通して関われることができればと思っています。それも含め、関西だけにとどまらず東京や海外でもっともっと活動していかなければいけないですね。

 

TDM
MMのメンバーは組織としてしっかり構成されているので、東京に行くにしても海外に行くにしても信頼して動けますよね。女性がリーダーで、この人数をまとめてこんなに組織として成り立っているのは本当にすごいと思います。

 

KAORIalive ありがとうございます。はい、本当に心強いです。自慢です(笑)。

 

TDM MMの発足のきっかけは?

 

KAORIalive
Legend Tokyo chaptre.1の時にKAORIのコレオグラフ作品で「KAORIalive」として参加していたメンバーを中心に、カンパニーとして継続的に活動していこうと思って集めたのがきっかけです。名前もその時につけました。見ている人の記憶に残るチームでありたい、そういう思いでつけました。チームは3年目です。

 

TDM 今後はメンバーの増員も考えていますか?

 

KAORIalive
はい、どんどんいろんな人と関わっていきたいと思っています。

 

TDM メンバーになる基準は?

 

KAORIalive 人間性ですね。技術とかも、もちろんありますけど、私と合うかよりも、この子をメンバーに入れていいのか、その人の質を考えますね。

 

■生きてる人は見に来て下さい!(笑)

 

TDM では、「GIFT」へのお客様に対してメッセージをお願いします。

 

KAORIalive p02GIFTは一人の絶対的なスターがいる公演ではないですが、そうではなくて一人一人は決して強くはなくても自分たちと同じみんなが集まったときに出るパワーがいっぱい詰まっている、そんな公演です。ダンスをやってない人にも楽しんでいただけますし、ダンスをやってる人も多いと思うので、そういう人には、ただ与えられた振りを踊るんじゃなくて、皆で集まって踊る素晴らしさとか、振りを揃える意味、カンパニーとしてのパワーを見て頂きたいかなと思います。どの年代でも、性別も関係なく、どんな環境にいたとしても「何か」を感じていただける作品だと思うので、生きている人は観に来て下さい!(笑)

 

TDM
楽しみにしています!ありがとうございました!

 

interview by Akiko and imu

’15/06/03 UPDATE

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tokyodancemagazine

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